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2025年10・11月号 巻頭言

   

 

『  復活のいのち 』  


                              主任司祭 使徒ヨハネ 田中 昇

 

 みなさんはローマにあるカタコンベのことをご存知でしょうか? アッピア街道沿いだけではなく、

 ローマ市内の古い聖堂などにも付属していて、旧市街地区を除いてローマにはなんと63ヶ所もあると言われています。カタコンベという言葉の本来の意味は、「下の墓」、「地下墓地」です。

 

実はこの地下墓地にはキリスト教だけでなく、ユダヤ教や異教徒のものもあり、場合によってお互いが隣接しています。しかしその呼び名にはちょっとした違いがあります。異教徒のカタコンベは、一般にギリシア語で 「ネクロポリス」(死者の町)と呼ばれるのに対して、キリスト教徒のそれは 「コイメテリオン」 と呼ばれるのが普通です。その言葉は様々な現代語にも形をとどめており、英語のcemeteryやイタリア語のcimiteroがそれにあたります。その意味は 「眠っている者の場所」です。

 

 これはまさに聖パウロが使っている表現 「キリストにおいて眠りについた者」(1コリ15:18)を連想させます。ヨハネ福音書ではイエスが墓から甦らせるラザロについて、イエスは「彼は眠っている」(ヨハ11:11)と言っています。つまりキリスト者の命は、死んでおしまいというのではなく、裁きの時あるいは復活の時を待っているかのように眠り、憩うている、それゆえ、その人々はいつかはそこから立ち上がっていくという含意があります。だからこそキリスト者は最初期から迫害を避けるためではなく、自分より先に亡くなった人の葬られた場所を訪れ、そこで記念の祭儀や会食を行ったりするためにカタコンベを作りました。その証拠に当時カタコンベの存在は秘密の場所ではなかったと言われています。

 

 私たちキリスト信者は、死んで新しい命に復活した最初の人・キリスト・イエスの神秘に永遠に結ばれたいと望んでいます。それが信仰の根幹でしょう。また私たちに先だった人々を復活の主に委ねたいという信仰による希望をも持っています。「主に属する人」(ロマ14:8参照)は皆、イエスと同じように復活させられると言われている通り、死はもはや終止点ではなく人生を捧げる総仕上げの時であり、また永遠の命への門なのです。この永遠の命は、すでに地上での主に属する生き方において開始されています。私たちはキリストの愛徳に生きる時、すでに永遠の命の歩みを進めているのです。みなさん、キリストと共にこの道を歩みましょう。

 
 
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